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2017-06-17

#つくるひと IRIIRI 入江優子

2017年4月取材 にんぎょう作家 IRIIRI 入江優子さんのこと。


 

IRIIRIさんのにんぎょうを見たとき「なんて楽しいんだろう!」と思った。

変わった柄、変わった質感の、さまざまな生地が使われていたこと。にんぎょうのかわいらしさや、細かな手仕事ももちろん感動したけれど、見れば見るほど生地や色の独特な組み合わせがなにより楽しかった。

IRIIRIこと、入江優子さんのにんぎょうづくりは、絵を描くことからはじまる。

キツネのにんぎょうの左隣に飾った絵は、つくりはじめる前に描いたというスケッチ画。「この動物をつくりたいな」「この生地を使ってつくりたいな」という気持ちを手がかりに、インスピレーションを絵に落とし込んでいく。

絵を描いて、絵を描いて、ひたすら手を動かすことで、考えていることを視覚的にまとめていく。

絵で描いたイメージをもとに、立体におこす。生地を合わせ、立体に仕立てあげるなかで、スケッチ画とは変わっていくこともしばしば。立体になって見えてきたカタチに修正を加えながら、ひたすらまた手を動かしていく。

小さいころから絵を描くことが好きだった入江さんは高校・大学と芸術系の学校へ進学。その後、テキスタイルデザイナーとして5年働いたあと、独学でにんぎょうづくりをはじめた。

「自分の思い描く絵の世界を、立体にしてみたかった」という想いも、にんぎょうづくりをはじめることになったきっかけのひとつ。そのうえに、生地のおもしろさに出会ったことも大きい。

「にんぎょうの世界やったら、いろんな布を自由勝手に組み合わせてつくれるから」

おもしろいテクスチャー、変わった柄…世の中にあふれるさまざまな布を、なんの規制もなく自由に組み合わせて表現できる場所を、入江さんはにんぎょうづくりの世界に見つけたのでした。

「組み合わせの実験をしているみたい」

と楽しそうに話す。

絵の世界を表現すること、布を自由に使うこと。入江さんにとって好きな2つのことが、うまく組み合わせられ、入江さんらしいセンスを発揮できるものづくりが、にんぎょうづくりだったのだと思う。


にんぎょう1体を仕上げるのに、だいたい1日以上。
素材やカタチと向き合う時間は、入江さんにとってワクワクさせてくれる楽しい時間だ。

「熱って伝わると思うから」

自分の気持ちが乗らないときは少し寝かしてみたり。

「つくっているときの気持ちは、つくるものにも表れると思うんです。にんぎょうは特に。出来上がったにんぎょうを見てくれたお客様が、なんだか楽しくなってワクワクした気持ちになってくれたら…自分がつくりながら感じてたワクワクした楽しい気持ちを、一緒に共有してくれたみたいで嬉しいんです」

糸ひとつにも手を抜かない。

全体の色のバランスを考えながら、ポイントになる色を考えていく。特に、複数の色の糸で印象的に仕上げたにんぎょうの目は、まるでメイクを施したかのよう。

「にんぎょうは抱き心地もよいものじゃなければ」

と、セレクトする生地にも気を配る。
つるつる、さらさら、すべすべ、ざわざわ…にんぎょうのどこに触れてもおもしろく、心地よい。


「このテクスチャーおもしろいでしょう」「こうしたらにんぎょうがかわいくなるんです」「この組み合わせはにんぎょうだからできるんですよね」「ここの目の色がポイントで…」

生地のこと、にんぎょうのことを話しはじめたら止まらない。
それほどワクワクしながらものづくりをしているんだなと、話せば話すほど伝わってくる。

 

でもそれは、IRIIRIさんのにんぎょうを一目見たときからしっかり伝わってきてたもの。

「つくることが楽しい!」その熱はやっぱり伝わると思う。

 

IRIIRI 入江優子
http://iriiri.petit.cc/
大阪在住。にんぎょう作家。
創造力の赴くまま布と対話するように作品を作っています。

大阪芸術大学工芸学科卒業後、テキスタイルデザイナーを経て
2000年からにんぎょう作家として活動をスタート。
2003年より毎年個展を開催。
2010年より毎月のにんぎょう作りワークショップを開催。
2012年パリでの展覧会「l’exposition japonaise Kawaii Zakka」に出店。
2012年イデアインターナショナルよりデザイン依頼を受けた
初の製品『KUCHI-PAKUアニマルスピーカー』を発表。
2013年には同メーカーより『マネトーク』を発表。どちらも全国で発売中。
2014年パリでの展覧会「Kawaii et cetera」に出店。

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