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2016-05-07

#blog ほんとのこと

わたしは熱心な読書家ではない。
数多くの本を読んできたわけでもないし、”本の虫”と言われるような人では決してない。
読むのも遅いし、とても疲れるので、リラックスしたいときには本は読まない。
だけど「本屋」とも思われるような店を開いてしまった。

わたしと「ほん」とのこと。

大きな本屋に行って、普段見慣れない字体とイラストで構成される書籍の表紙を、絵画をみるように楽しんだこと。一冊一冊の装丁の違いと、その美しさを知ったこと。ふと出会う一言に心惹かれたこと。京都の街で見かけたフリーペーパーやリトルプレスから、紙で発信するおもしろさを感じたこと。

わたしが本というものを好きになったのは、そういうことの積み重ねで、雑誌編集者という職業を選んだことにある。

お店をはじめるまでの7年間、わたしは編集者だった。雑誌編集者といっても、地方のタウン情報誌の編集者だけど。都会では分業なのだろうが、ここでは特集企画も考えるし、カメラを持って取材にも行く。そして記事も書いて、タイトルやキャッチコピーも考えて、誌面レイアウトも考える。そのどれもぜんぶ大変だったけど、ぜんぶ大好きだった。

本が、雑誌が、どんな風につくられているのかを知っているから愛おしい。

わたしは、つくり手の愛情と情熱を感じる”ちいさな”本たちを、伝えていこうと思った。

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ちいさな出版社やクリエイターがつくる、流通の”ちいさな”本たち。

これらは一般書店では見かけない「めずらしいもの」かもしれないけれど、ちいさな出版社だからできる本づくりがあるし、敢えて大きな流通には乗せずに直接取引きで販売していく雑誌も、クオリティが素晴らしいものが多い。立派な「本」として知ってほしいと思う。

わたしと「ほん」とのこと。
つくり手だったから、わかること。

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最近読んだ本に都築響一さんの「圏外編集者」がある。

わたしは、過去に戻れたらとか、生まれ変わったらとか、考えることはめったにないのだけれど、この本を読んで、もし人生をやり直せるなら雑誌全盛期の東京で編集者として働いてみたい、と思った。生まれて初めて。

わたしはずっと、編集者に憧れているのだ。

 

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