#アトリエ探訪 PULL+PUSH PRODUCTS.

2017年5月 京都・太秦にある、PULL+PUSH PRODUCTS. のアトリエへ。


 

PULL+PUSH PRODUCTS.(プルプッシュプロダクツ)は、佐藤延弘さんがデザインから製作まで手がけるクラフトブランド。梱包・発送・販売営業を担当する小松左苗さんと、2人で運営している。

PULL+PUSH PRODUCTS.では、最近では、ポリエチレンを使ったプロダクトシリーズや、青焼(ジアゾ式複写)によって感光された紙を使ったプロダクトシリーズなど、さまざまな素材で考え出されたシリーズを展開している。そのなかでも今回のPOP UP STORE(2017年5月20日〜)では、「モルタル」でつくられたプロダクトシリーズ<Motif collection>をご紹介します。

「モルタル」とは、砂とセメントと水とを練り混ぜて作る建築材料。
ホームセンターでも手に入るわたしたちに身近な素材です。

ご覧のように、モルタルでつくられたマンション・プランターは、水やりや温度湿度の変化など日常のさまざまな要因によって、シミができることもあるし、ヒビが入ってくることもある。ああ汚れてしまったなあ、と感じるかどうかは人それぞれの感性ではあるけれど、PULL+PUSH PRODUCTS.は、そんな風に変わっていく姿を「愛おしい」と表現する。色が変わっていくのも、糸がほつれていくのも、日々の自然と人との関係性から生まれた「愛おしい」ものなのだと。

PULL+PUSH PRODUCTS.のプランターは、植物が生きて育っていくのと同じように、プランターも生きて育っていくのだ。

くたくたに使い込んだ割烹着型の作業着で出迎えてくれた佐藤さん。
商品の構想やデザインをするだけでなく、自身の手を動かし、製品を仕上げている。
作業着の胸元についたシミも、きっと「愛おしい」もの。

「複製品になってしまうのは嫌なんです。木型に流し込んだモルタルは、接する木型によって表情が変わってくるし、乾かしてから角を削ったりするような仕上げの仕方によっても一個一個、形は違ってきます。そうやって自分が手をかけたという跡は残しておきたいんです」

「時間軸があるものに興味があるし、時間を感じるものをつくりたい」
と佐藤さんは言います。

「雑貨であっても“ただ置かれている物”になるんじゃなくて、使う人に触ってもらったり手間をかけてもらったり、人との距離が近い関係性になれる物をつくっていきたいと思ったんです」

モルタルでつくられたプロダクトシリーズ<Motif collection>では、プランターのほかに、お香を楽しめるインセンスポットや、コースターなども展開している。

「インセンスポットは煙突からお香の煙が出てくるようにしました。インセンスポットを置くと煙のゆらぎによって、動きのある空間にしてくれるんです」

 

物と物、物と空間、物と人、物と自然、、、
あらゆる要素との関係性を考えながらつくられている。

「かっこいい」と「かわいい」のちょうどいいバランスを持った、そのデザイン性の高さに惹かれた PULL+PUSH PRODUCTS. の商品たちだったけれど、佐藤さんの話を聞けば聞くほど奥が深いところに連れていってくれる。笑

でもきっと本当に惹かれたのは、そんな背景があったから。ただかっこいいものじゃなく、ただかわいいものじゃなく、ただ置かれただけのものじゃなく、考えられて生み出された、作り手の「愛おしい」ものだったからなのだと思う。

「自分がつくらなくても 、物が勝手につくっていく形に興味があります。そこからヒントを得て、ものづくりができたら」

佐藤さんは難しいことをさらっと言います。

アトリエの壁の一角には、佐藤さんが気になって収集したという物たちが貼られている。
丸まったロープや、括られたスポンジ、テープがくっついた某キャラクターなどなど。
どれも意図的にその状態にしたものではなく、“そうなっていた”ものを、佐藤さんがなんだか気になりコレクションした。
インスピレーションの素だという。

その様子は佐藤さんのブログでも少し→ http://hitotsuhitotsu.com/

「街を歩いてモチーフのネタ探しをして、そのインスピレーションを卓上サイズの物に置き換えるものづくりをしていた時期もあったけれど、最近では身の回りにある小さな範囲でインスピレーションの素をたくさん見つけるようになりました」

 

佐藤さんはデザイナーでありクラフトマンでもあるけれど、素材の研究者だなと思った。
佐藤さんの目からは日常はどんな風に見えているのだろう。

<Motif collection>以外にもさまざまなシリーズ展開を行なっているPULL+PUSH PRODUCTS.。
シリーズはまだまだ増えていくんじゃないかと思っている。
時間軸と関係性とで生まれてくるさまざまな素材のプロダクトに、きっとこれからも驚かされるんだろうと楽しみにしている。

PULL+PUSH PRODUCTS.(プルプッシュプロダクツ)
http://pull-push.com/

2002年よりスタートしたクラフトブランド。 京都太秦を拠点に活動をしています。 デザイン、製品製作、梱包から発送まで、自分たちの手で行っています。素材とストーリーをモノ作りのコンセプトとし、使うときの楽しさ、触れたときの質感を大切にしたアイテムを発表しています。
大量生産や高度な機械を必要とする精密なモノ作りはできませんが、 手仕事の中で生まれる繊細さや緩やかさを大切に考え、作り手の温度が伝わる製品をゆっくりとしたペースで提案しています。


佐藤 延弘 (さとうのぶひろ) Designer & Craftsman
素材の感覚や、使うことでわかる面白さを大切に、手に触れたくなるようなアイテムを自身の手仕事を通して一つひとつ製作しています。
1977     神奈川県生まれ
1995-1999   京都精華大学美術学部デザイン学科建築分野 卒業
1999-2002  造形制作会社に勤務 立体模型、アミューズメント装飾等の造作・設計を担当
2002                PULL + PUSH PRODUCTS.として活動開始
2006-現在      京都精華大学 デザイン学部 建築学科 非常勤講師
2007-2010  京都嵯峨芸術大学 芸術学部 観光デザイン学科 非常勤講師
2012-現在       嵯峨美術大学(旧・京都嵯峨芸術大学) デザイン学部 生活プロダクト領域 非常勤講師
2016-現在       滋賀県立大学 人間文化学部 生活デザイン学科 非常勤講師

2017-05-18 | Posted in storyComments Closed 

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