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2016-04-13

#つくるひと はしもとなおこ

hashimoto_story

2016年2月取材 テキスタイルデザイナー はしもとなおこさんのこと。


大阪のギャラリーで出会った、ライオン柄の布のポーチ。
座っているメスライオン、たてがみがあるオスライオン。
線画のライオンが何匹も並ぶ一枚の布からポーチになった姿は、どれも同じものがなく、こっちのはたくさんライオンが横たわっている、あっちのはオスライオンが縁から顔をのぞかせている。
さて困った。どれにしよう。
一枚の布はポーチに変わって、いくつもの表情を見せてくる。

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つくったひとは、大阪在住のテキスタイルデザイナー、はしもとなおこさん。
イラストレーターとしても活動している人。

水色のドアがかわいい、ちいさなアトリエにお邪魔しました。

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金沢美術工芸大学で染色を学んだあと、インテリアテキスタイルの会社で企画デザイナーとして勤務。2011年に独立し、地元・大阪を中心に活動するフリーランスのテキスタイルデザイナーへ。

依頼を受けて布の図案を描く仕事の傍ら、「はしもとなおこ」としてオリジナルテキスタイルづくりもスタートさせた。

はしもとさんの布づくりは、スケッチブックに向かって線を走らせることからはじまる。

「布の図案を描こうと思ったら描けなくなるんです。だから無心でただただスケッチをして。身近にあるものからインスピレーションを受けて浮かんだ線や形を描いていくんです」

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「描いてるときはなんにも考えてなくて、布をつくろうってなったときにようやく”布になったらおもしろいものはどれだろう?”って考えながら、今まで描いたものを見返していていくんです」

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「悩んだら壁に貼ってみます。次の日に見てよくないと思ったら使わない。冷静になった状態で見ても”良い”と思うものを布のデザインに採用していきます」

 

ものづくりに対して真面目な人。

初めてお会いして話しをしたときもどこか緊張したのは、キレイな人だったからだけじゃなくて、目がまっすぐだったからだ。ちゃんと受け止めて、考えて、ひとつひとつを言葉にしている感じ。どの言葉にも芯がある。

「今、悩んでるんです。イラストを描くことと布をつくることとの境界線がわからなくなっていて、今はそれを自分のなかで整理している途中なんです」と話す。

しっかりと向き合っているからこそ、悩みが尽きないのだと思う。

そして、その今の悩みこそ彼女の作品の魅力になっているんじゃないかと思う。「イラストを描くときと、布づくりを考えるときと、使う脳みそが違う」と話すように、はしもとさんは「作家」としての感性と「デザイナー」としての視点を併せ持つ人。出来上がった布は「みんなのもの」と話すのも面白い。

「布は、自分一人で完結しないものづくりだからおもしろい」

自分の描いた絵を「素材」として、どんな配置がいいか、どんな色がいいか、とデザインしたあと、京都の染色工場で染められ、布として仕立てられる。

「はじめは自分でも型染めをしてみたりしていたんです。でも、それではやりたいことの半分しかできなかった。染色の職人さんや縫製の職人さんと一緒にものづくりをすれば、高いクオリティで自分のつくりたいものを完成させられる。職人さんは微妙な色の指示にもしっかり応えてくださって、みんなの手が加わっているからこそ、商品になったときに”もっと見てほしい”、”手にとってほしい”って思えるんです」

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「この布はどんな風に変わっていくんだろう?」

縫製の職人さんたちの手によってバッグやポーチなどに仕上がってきたときにも、裁断や縫製の位置によって、自分の想像していない構図が生まれることが楽しいのだという。

「自分の手から離れたところで、使う人の好きなように変わっていく布にわくわくするんです」

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はじまりは一本の線。

みんなつながっている。

一本の線から
一枚の布へ。

その先は誰のもとへと、どんなものへと、つながっていくんだろう?

 


はしもとなおこ 個展 「はじまりは一本の線」at. uta no tane 2016/04/16 – 05/10 開催

はしもとなおこ
http://www.hashimotonaoko.com
テキスタイルデザイナー
大阪在住。金沢美術工芸大学美術工芸学部工芸科卒。インテリアテキスタイル会社で企画デザイナーとしての勤務を経て、2011年よりフリーランスで活動をはじめる。オリジナルのテキスタイルの制作や、イラストレーターとしても活動中。

 

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